運転手は無意識かもしれない

この記事では運転について考えすぎた僕が、安全運転とは何なのか、危険運転や交通事故はなぜ起こるのかを解説します。

ざっくりとした記事の内容

違反や事故の原因は、たぶん「運転手が無意識だから」。

・車やバイクの操作方法は基本的に超簡単
・警察の取り締まりは多くの交通違反は見逃されていて、ドライブレコーダーの映像提供にも対応しきれない。
・免許更新も誰でも更新でき、危険運転がふるいにかけられることはない

以上から、行政に放置された中で超簡単な操作を前にした運転手は、「周りに合わせるため、少しくらい仕方ない」などと、少しずつ安全意識を崩してしまい、最終的には安全無意識で運転をする状態に陥る。(操作が簡単すぎて無意識でもできてしまう)

安全無意識状態では安全運転に必要な様々な能力が失われる。
また自分を制限する機能も失われ、「早く帰りたい、疲れた、仕事で急いでいる」などの欲求や衝動が運転に現れる。

無意識運転が当たり前になると危険運転に依存してしまい、安全運転を遅く、退屈に感じ、被害者意識を抱き他者へ干渉してしまう。(これら安全無意識や危険運転依存は車両の特徴や運転の仕方、シチュエーションによって見分ける事ができる。)

結論としては車やバイクの運転は簡単すぎて人間に扱える代物ではない。人間が運転しない方向に考えるべきではないかと考える。

はじめに

皆さんの中で車やバイクの運転をする人は、運転についてどう思っていますか?
「運転は苦手、怖い、疲れる」という人より「運転は得意、不安はない」というか「特に何も思わない」という人の方が多いと思います。
では運転中に自分はどれくらいのスピードで走っているのか、例えば普段利用する道路の制限速度は何km/hか、また、その速度で安全に止まるために必要な距離は何mかを答えられるでしょうか?

これが答えられる人はとても少ないと思います。また、その速度と距離を守って運転できる人はもっと少ないと思います。
それは考えながら運転をしている人が少ないからではないかと考えます。

「運転操作ができること」と「安全運転ができること」は全く別です。これを理解しているかどうかが、違反や事故がなかなかなくならない問題の根幹だと思います。

バイクも車も基本的な操作はハンドル、アクセル、ブレーキと、めちゃくちゃ簡単です。操作だけなら無免許でもできます。
ではなぜ免許が必要かというと、安全運転には交通ルールの理解が必要だからです。

車両の操作が簡単な上に、道路交通法は初心者や運転が苦手な人も含めた幅広い運転手が守れるレベルに設定されているので、運転を甘く見てしまうと、無意識のうちに簡単に交通違反をしてしまいます。
操作は無意識で出来ても、交通ルールは意識しないと守れないんです。

そして、そんな無意識に違反をする運転が当たり前になってしまうと、どんなに心の優しい人でも気づかないうちに安全に運転する力が失われてしまい、安全運転に戻れなくなります。
これが年間500万件以上の交通違反と、30万件以上の交通事故を引き起こす原因だと考えています。

この記事では「操作と安全運転の違い」が及ぼす影響を、僕の10年間の運転経験と実際のデータから解説しています。
運転初心者や運転が苦手な方のモヤモヤを解消するとともに、安全に走行する方法もお伝えします。
運転をしない方も、普段運転手がどんな運転をしているか知っていただけると思います。

○現状の確認

昨今、交通犯罪による衝撃的な事故や事件がいくつも報道されました。
「あおり運転」という言葉は、わざと前の車両に接近する行為以外にも、幅寄せ、急停止、執拗なパッシング(ハイビームのライトをピカピカ点滅させる行為)やクラクション等も含めて広く認知され、令和2年6月には「妨害運転罪」として法改正も行われました。
高齢ドライバーの免許返納数も増加しましたし、高齢ドライバーの免許更新システムも変更されました。
社会全体で運転の危険性への関心が高まっていると感じます。

しかし未だ毎日のように交通事故のニュースを目にするのが現状です。
昨年令和2年は、交通違反件数575万1800件、交通事故発生件数30万9000件、負傷者数36万8601人、重傷者数2万7774人、死亡者数2839人でした。1日平均、1万5758件の交通違反、846件の交通事故が発生しています。

 

道路の交通に関する統計 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について 全資料 令和2年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について 年次 2020年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口  道路の交通に関する統計は、道路交通法第2条第1項第1号に規定する道路上において、車両、路面電車及び列車の交通によって起こwww.e-stat.go.jp 
 

これらの数字は、年々減少へ向かっているものの、未だ高い水準で推移しています。
それは実際に運転していても感じます。僕は10年間車の運転をしていますが、実際の道路で危険運転が減少したという実感はありません。一見、気をつけて運転しているように見える車やバイクですが、本当に道路は安全に向かっているのでしょうか?なぜ違反や事故はこんなにも多いのでしょうか。

○無意識で運転する運転手

10年間、たくさんの運転手を観察して見えてきたのは、「大半の運転手は運転中に安全について意識も注意していないし、その自覚も無いのではないか?」という仮説です。
悪く言うなら運転中、安全に関しては「何も考えていない」「安全意識」が抜け落ちて「安全無意識」状態で運転を続けていると考えています。

「無意識」とは運転中にボーッとしているというだけではなくて、個人的な考え事をしたり、ラジオや音楽、同乗者とのおしゃべりを楽しんだり、仕事や約束に遅れないように急ぐ気持ち、早く帰りたい気持ちや欲求はあるが、安全に運転することに関しては意識できない、何も考えていない、忘れてしまった、またその自覚も無いという状態です。

みなさんも危険な運転を目撃したり、巻き込まれた時、その運転手に対して「コイツは何を考えているんだ?」と思ったことがあると思います。
信じられないかもしれませんが、彼らは「特に何も考えていない」のだと思います。この記事の冒頭の「運転についてどう思うか」という質問に、「特に何も思わない」と思った人は運転中も特に何も思っていない可能性があります。

「運転手は無意識」という仮説を立てた理由を4つ紹介します。

理由1、車両の操作も交通ルールも簡単

車やバイクはとても便利な道具です。運転の苦手な方もいらっしゃるでしょうが、基本的には若者からお年寄りまで誰でも運転できます
先程述べたように、運転に必要な操作はハンドル、アクセル、ブレーキととても簡単だし、道路交通法も実際の道路に沢山の標識やラインが整備されていてとても分かりやすいです。
運転免許試験の合格率は70〜75%で、令和2年の運転免許保有者数は8198万9887人もいます。

しかし強くて大きな車体は便利な道具である反面、簡単に人を傷つけ命を奪ってしまう「凶器」でもあります。
それだけの危険な凶器を、指先や足先の数cmの動きだけで誰でも簡単に操作できてしまうのです。
これだけ簡単な操作だと、無意識でもできてしまうと思います。

例えば自転車を運転している感覚を思い出して欲しいのですが、
自転車もハンドル、アクセル、ブレーキの簡単な操作で動きますし、基本的には練習すれば誰でも乗れます。
自転車の運転は簡単なので考え事をしながらでも運転することができますよね。でも自転車の運転中に、自分が何km/hで進んでいるかとか、停止距離が何m必要かなんて考えず感覚的に運転すると思います。そういった運転を車やバイクでも行っているのではないかと考えます。

車やバイクの攻撃力は自転車よりはるかに攻撃力が高く危険です。ですから車やバイクは免許があります。(ちなみに令和2年では、自転車同士の事故で392人、自転車対歩行者の事故で306人の方が亡くなっています。自転車も立派な凶器です。)
なのに操作が簡単すぎるが故に自転車と同じようにスピードも車間距離も考えずに運転をしてしまっているのではないでしょうか。

理由2、違反の数は多いがパターン化されている

10年間たくさんの道路交通法違反を見てきましたが、それぞれの違反の「レベルや程度」は、誰に教わった訳でもないのに皆ほぼ同じなんです。
様々な考え方の人がいる中で、同じようなレベルの違反を繰り返す彼らの共通点は「ゼロ=無意識であること」しか考えられませんでした。

ここでよく目にする道交法違反とそのレベル、違反の程度を紹介します。運転をする方はよく見る光景だと思います。

・最高速度違反(スピード違反) 1,162,420件

第二十二条 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない

「最高速度」とは法定速度、制限速度いっぱいの速度のことですが、だいたい最高速度+10km/h以上のスピードで走る事が多いです。なので最高速度で走っていても後ろから追いつかれます。
最高速度30km/hと定められている原付自転車一種でも、車や中型、大型バイクと同じ速度で走行します。

速度が大きいほど、危険に気づいてからそこへ到達するまでに残された時間が少なくなります(この時の速度を「危険認知速度」と言います)。また速度が高いほど事故の衝撃も大きくなりますので、死亡事故につながる確率も増えます。

・車間距離保持義務違反、あおり運転(件数わかりませんでした)

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

車の場合、一般道では5m〜20mぐらい、高速道路などでは40m以下の車間距離で走る事が多いです。
バイクの場合は更に距離が近く、先行車両の5m以下まで接近してくることもよくあります。また、車の後ろを走る場合、ドライバーの死角になりやすい「車体の左斜め後ろ」のポジションを取って走ることが多いです。
これらの車間距離は複数車線での進路変更や、横道やお店からの合流時の基準にもなっています。
しかし安全に止まるために必要な距離は速度によって違うので、いつも同じ車間距離では不十分です。

これを無意識にやっていれば「車間距離不保持義務違反」、わざとやっていれば「あおり運転」という扱いになります。

これは速度と停止距離の関係を表したグラフです。

速度と車間距離3
図1 速度による停止距離(空走距離+制動距離)

制動距離と空走距離とは。停止距離の計算方法|チューリッヒ 制動距離と空走距離のご説明。運転免許証を取得するときに教習所でも習った制動距離、空走距離、停止距離、停止距離の計算方法もご www.zurich.co.jp 
 

「停止距離=空走距離+制動距離」で導きます。
「空走距離」は運転手が危険に気づいてからブレーキを踏み込むまでの間に車両が進む距離、
「制動距離」は踏み込んだブレーキが効き始めてから停止するまでに車両が進んでしまう距離です。
この制動距離は路面の状況や積載量によっても変わります。

このグラフは運転手が「1秒」で危険に気づいた時の空走距離を元に作られています。
例えば40km/hで走っている時、前方の危険に1秒で気づいたとしてもその間に11m進んでいて、そこからブレーキを踏み込んで停止するまでに更に11m、合計22mの車間距離が取れていないとブレーキを踏んでも間に合いません。
危険に気づくのに時間がかかる人はその分車間距離を取る必要があります。

◎車間距離を測る方法
・目印を使う方法
車線境界線(複数車線の時の車線と車線の間の線)やセンターラインの点線と点線の間隔(一般道は5mのライン+5m間隔=計10m、高速道路は8mのライン+12m間隔=計20m)の数を数える、または高速道路の確認地点を利用します。
80km/hまでは速度−15の車間距離「例:40(km/h)−15=25m」、80km/h以上は速度の数字ぶんの車間距離「例:80km/hなら80m」と覚えておきます。

・自分で基準を作る方法
前の車両まで車両何台分のスペースか自分の目で測ったり、何か目標物(停止線やマンホール、看板など)を決めて前の車両がその目標を通過してから自分が通過するまでの秒数を数えて速度に当てはめます。
例:40km/hでは1秒間に11m進む、必要な停止距離は22mなので2秒分の車間距離をとる。50〜70km/hは3秒分、80km/h以上は4秒分の車間距離をとる。

車間距離が短いと、前の車両で前方の見通しが悪くなるので、危険に気づくのが遅れやすくなります。危険を確認してからそれを回避するために残された時間も少なくなり、追突事故の確率が高くなります。

・横断歩行者妨害 290,532件、一時停止違反 1,604,972件

第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

車両が信号のない横断歩道を通過するときは、停止線で安全に停止できるスピードまで減速し、歩行者や自転車が待っている場合は横断歩道手前で停止する義務がありますが、雨の中、濡れながら歩行者が待っていても、すでに対向車線で停止して待っている車両がいても、減速すらせず通り過ぎる人が多いです。

JAFが2020年に行った調査によると、約8割の車、バイクが、信号機のない横断歩道で歩行者が待っていても停止しませんでした。

信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2020年調査結果) 「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2020年調査結果)」についてご案内します。 jaf.or.jp 

一時停止違反(一時停止標識のある停止線で止まらない違反)も同じです。
一時停止の停止線の先には横断歩道や歩道の切れ目など歩行者や自転車の通り道が横切っていますが、止まらずに少し減速するだけの車両や停止線を超えて交差点まで進入してから減速する車両が多いです。

一時停止線があるということは左右の見通しが悪いということなので、これでは前を横切る歩行者や急に現れる自転車に対応できません。坂道や子供の多い地域などは特に危険です。相手は車やバイクより交通弱者ですので死亡事故の可能性も高くなります。

・信号無視 635,485件

信号の変わり際、明らかに間に合わないタイミングでも交差点に突入してしまう人もよく見かけます。特に渋滞が多い交差点だと侵攻方向は赤信号に変わっていても左右の信号が青に変わるまでなら前に続いて進んでしまいます。

交差点は人が集まる場所です。
このような運転は歩行者、自転車、車両全てを巻き込む可能性があり、とても危険です。また信号を無視する瞬間は気持ちも急いでいて加速していることが多いので、事故が起きた時の衝撃も大きくなります。

・合図不履行(指示器を出さない違反)

右折左折、進路変更の直前まで方向指示器を出さなかったり、全く点灯しない車両もよく見かけます。
店舗や横道から合流しようとしている車に前を譲ったら、実は指示器を出していない右折車だった、なんてこともあります。その逆も。

・その他

その他、スマホ操作や通話をしながらの「ながら運転」、交差点内に駐車、停車する「駐車禁止違反」など。

理由3、どうやら「わざと」じゃなさそう

先に述べたように、車やバイクの操作はとても簡単だし、標識やラインもわかりやすく整備されているから、こういう違反をする運転手は「わざとルールを守らない人」と思われがちですが、10年間いろんな運転手を観察してきた結果、僕には彼らの運転から「わざと危険な行為を選択している」という意思が感じられませんでした。

大半の運転手は「危険と分かっていながら」「わざと」危険運転を選択をしているわけではなく、安全について考えられなくなった結果、無意識に危険な運転をしてしまった、としか説明がつきませんでした。
そう思ったエピソードをいくつか紹介します。

・道を譲っているのに追い越さない

違反の中でも僕が最も被害に遭うのは「最高速度違反・スピード違反」と「車間距離保持義務違反・あおり運転」です。最高速度以上のスピードで追いついた車やバイクが、安全な車間距離を取らずにそのまま走り続ける行為です。
僕のこれまでの経験では9割以上の人がこの違反をしていると思います。

しかし彼らはスピード違反をしてまで追いついたにも関わらず、車間距離を詰めることはあっても絶対に追い越しはしません
追い越し禁止区間じゃなくても、対向車線に誰もいなくても、複数車線であってもです。
彼らは先を急いでいるのではないのでしょうか?

そんな時、僕はお店の駐車場やバス停などのスペースに避難するか、指示器やハザードランプを点灯して路肩に停止し、道を譲ります。そこまですると彼らはやっと追い越しの動作に入ります。
僕が路肩に停車してもまだ追い越さない人もいます。
僕と一緒になって減速、停車して、少し経ってからやっと追い越して行きます。クラクションを鳴らす人もいます。

追い越しの際、彼らは不思議そうにこちらを見つめたり、不機嫌そうに睨んだり車内で文句を言いながら追い越して行きます。

驚くほどに多くの運転手が、スピード違反をして危険な車間距離まで接近しておきながら、道を譲られると対応することができません。
まるで道を譲られるとは思っていなかったような反応を見せます。
彼らは僕に「もっと速く前へ進むこと」や「道を譲ること」を求めてわざと危険運転をで圧力をかけていた訳ではないようなのです。

・道を譲ってくれたのに接近する

店舗などから公道に出る時、停止して前を譲ってもらえてとてもありがたいのですが、前に通してくれた方が十分な車間距離を取れず、接近してくる事がよくあります。彼らが接近する為にわざと道を譲ったとは考えられません。世の中そんなに悪い人達ばかりとは思えません。

・ステッカーやお守りをつけているのに違反をする

違反や危険運転をする人達の中には、車に「子供が乗っています」や「ドライブレコーダー録画中」のステッカーを貼っていたり、車内に交通安全のお守りを吊るしている人がいます。
彼らが自分の子供を危険な目に遭わせたいだとか、自分の危険運転ドラレコに記録したい、神頼みをして一か八か危険運転をしているなんて、当然思えません。

・警察の前でも安全運転をしない

たまにパトカーが巡回していたり、警察官が見張りをしている姿を見かけますが、その時ですら制限速度以下にスピードを抑えたり、十分な車間距離を取れる運転手は少ないです。
パトカーに接近して走る車両の姿も何度も見たことがありますが、もちろん取り締まりを受けるためにわざと違反をしているとは思えません。

理由4、安全運転義務違反が多い

安全運転義務違反という違反をご存知でしょうか。

第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

こんなルールは言われるまでもなく当たり前のことなのですが、実は交通事故の70%、死亡事故の57%の違反を、この安全運転義務違反が占めています。

安全運転義務違反の内容は7つに区分されます。「安全不確認」「前方不注意」「動静不注視」「操作不適」「安全速度違反」「予測不適」「その他」です。
その中でも多い違反がこちらです。(令和元年のデータを参照)

・安全不確認 114,123件
前方、後方、左右の安全確認が不十分な運転。

・前方不注意 83,271件(脇見運転 52,796件、漫然運転 30,475件)
よそ見をしたり、カーナビの操作や車内の探し物、仕事の書類の確認、化粧などをしながら運転する脇見運転。
前を向いて運転してはいるが、頭の中はボーッとしていて、信号や歩行者、車両などの周囲の動きや状況が見えていない漫然運転。

・動静不注視 37,856件
歩行者や車両など周囲の動きや状況は見えているものの、その中での自分の動き(直進、右折、左折など)や動き出すタイミングの判断を誤ってしまう。

・操作不適 22,941件
アクセルとブレーキの踏み間違いや、ハンドル操作などの操作ミス。

・安全速度違反 1,711件
制限速度内で走っているものの、見通しの悪い交差点や、住宅街などでも減速や徐行を怠ってそのままの速度で走行してしまう。

・予測不適 データなし
「相手が避けてくれると思った」「スピードは出ていないと思った」「車間距離は取れていると思った」と自分に都合の良いように思い込みをしてしまう。

 

道路の交通に関する統計 交通事故の発生状況 3 交通事故の状況 3-2-1 原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別交通事故件数の推移 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口  道路の交通に関する統計は、道路交通法第2条第1項第1号に規定する道路上において、車両、路面電車及び列車の交通によって起こ www.e-stat.go.jp 
 

アクセルとブレーキの踏み間違いなどの「操作不適」は、高齢ドライバーの事故の原因としてニュースなどでよく見かけると思います。運転手自身が操作ミス一つで事故を引き起こすことを自覚しているのかは疑問ですが、純粋な操作ミスは、人間が扱う以上完全に無くすのは難しいかもしれません。

それでも他の違反は注意していれば防げるものばかりですし、運転手として守って当たり前のルールです。
側から見ればちゃんと前を向いて普通に運転しているように見える運転手も、このような信じられないような運転をしているのです。

これらの違反はあまりにも初歩的で、無意識でないと起こらない違反だと思います。

○「安全無意識運転」の特徴

安全意識が抜け落ちた無意識での運転は、教習で習った内容が活かされていない、操作感だけで路上に出ているような運転になります。
また、車やバイクを運転する最大の理由「早く目的地へ行くこと」が運転に表れます。
信号が赤になったら止まる、白線からはみ出さずに車線通り走行する、他人やモノに接触しそうになったら止まる、といった子供でも知っている程度の事しかできず、他者との境界線も限りなく薄く幼稚な運転になってしまいます。

無意識になるプロセス

教習所の実地教習で初めて道路に出た時、運転初心者の時に「教習と実際の道路は違う」と感じた方は多いのではないでしょうか。
実際の道路は道路交通法違反で溢れていて、教習通りの運転では必ず危険運転に巻き込まれてしまいます。

初心者の頃はそんな彼らのスピード違反や車間距離保持義務違反、危険な割り込みなどに巻き込まれないために、彼らの危険なスピードや車間距離に合わせるのが精一杯だと思います。
しかし運転なんて簡単なもので、次第にそんな運転にも慣れて、特に意識しなくても彼らと同じように運転できるようになります。知らないうちに彼らの仲間入りを果たしてしまうのです。

事故の前には何らかの違反がつきものです。冒頭で紹介した違反と事故のデータを参照すると、車両側の交通違反が事故に繋がる確率は約5%(交通事故309000件÷交通違反5751800件=0.0537…)です。
事故に発展しなかった検挙されない違反が圧倒的に多いので、この確率はもっともっと低いです。

運転に慣れた運転手はこの低い確率を肌で感じて、「ちょっとくらい違反しても意外と大丈夫」「急いでいるから仕方ない」と、判断基準を道路交通法から「個人的な判断」「自己流の運転」へとシフトしていきます。

こうして「違反をしても捕まらなかった運転」「違反をしても事故にならなかった運転」の経験を繰り返すうちに、初心者の頃に持っていた違反や危険運転に対する違和感や抵抗が薄れていき「安全無意識運転」へ発展します。

また、車やバイク特有の「強み」もそれを手助けします。
・車体やヘルメットで顔が見えない匿名性から、自分本位の運転になりやすい。
・高いスピードの中での一瞬の人間関係なので、相手への配慮を欠いてしまう。
・鉄の塊に守られている事で強くなった気持ちになり、態度が大きくなる。
・音楽や内装など自分だけの空間にリラックスしてしまい、緊張感が薄れる。

この結果、現在道路を走る車やバイクの運転手の大半は何も考えず前の車両について行くだけの運転をしてい流のではないかと考えます。運転操作自体は簡単なので、無意識でもこの程度のことならできてしまうんです。

「安全無意識運転」で起こること

無意識のまま運転を続けていると、気づかないうちに安全運転に必要なことができなくなります。
また、それぞれの要素が相互に影響しあってどんどん安全からかけ離れた運転が作られていきます。安全無意識によって運転手に起こる変化を紹介します。

セーフティネットを失う

無意識に陥ることで、まず「余裕を持った運転計画」「かもしれない運転」「道路交通法」など、安全運転に必要な知識や考え方を使う機会を失います。

この知識や考え方は接触事故までのセーフティネットです。
「①余裕のある運転計画」→「②かもしれない運転」→「③道路交通法を守った運転」→「④とっさの運転操作(急ブレーキ、急ハンドル)」の順にセーフティネットがあり、危険へ近づきます。

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図2 接触事故までのセーフティネット

安全無意識状態で運転を続けると、気づかないうちに①〜③のセーフティネットを失ってしまい、接触事故までには「④とっさの運転操作」しか残りません。
そうなると事故の可能性はその運転手の反応速度に委ねられることになりますが、これもわざとセーフティネットを減らしているわけじゃないので自分が危険な状況を作っている自覚がなく、急に目の前に現れた危険にとっさに反応できません。

車間距離保持義務違反の項で紹介した「図1 速度による停止距離 のグラフ」は、運転手がたった1秒で危険を認識する前提で作られていますが、1秒で危険を認識するのは無意識の運転手には難しいと思います。仮にとっさの運転操作で避けられたとしても、その結果第三者に被害が及ぶ可能性もあります。

安全運転をするためにはセーフティネットを意識する必要がありますので無意識だとどうしても危険な運転になります。そして使わない知識はそのまま忘れてしまっている人も多いと思います。

・はやく進みたい気持ちが前面に出る

多くの人が車やバイクを購入したり、運転する動機は、「早く目的地へ着くため」だと思います。セーフティネットが機能しないと「はやく進みたい」という欲求が前面に出ます。「はやく進みたい、でも危ないからやめておく」という考えには至らず、欲求や衝動のままに短絡的な運転をしてしまいます。

例えば前方にスペースがあった時、無理に詰めてそのスペースを埋めることで、前進や目的地へ近づいていることを実感することを我慢できなくなります。

また、前方に青信号が見えた時や点滅する歩行者信号が見えた途端に、「進みたい」「止まりたくない」という欲求、衝動のままに急いで加速してしまいます。
カーブの先の状況が見えない時などでも、希望的観測を我慢することができず急いでしまいます。

・自覚なく危険運転をしてしまう

何度も言うように、運転操作自体は簡単です。
車ならアクセルを数cm踏み込むだけ、バイクなら手首を少しひねるだけで加速します。
その上、道路交通法は運転の苦手な人も含めた運転手全員が守れるレベルに均されて設定されているので、何も考えずに運転していると最高速度違反や車間距離保持義務違反など、簡単に道路交通法を違反してしまいます。

交通違反の状態では事故の確率も上がります。
事故にならなかったとしても危険な目に遭う(ヒヤリハット)確率も高くなりますが、無意識だとその危険がなぜ起こったのか、何が正しくて何が正しくなかったのかが分からず反省することができません
反省ができないとその経験が次の機会に活かされず同じことを繰り返してしまいます。

また、自分が無意識だという自覚が無いと、運転手同士のトラブルにも発展しやすくなります
あおり運転や妨害運転などの当事者が、お互いに「自分は何もしていないのに相手から攻撃を受けた」と証言するケースがよくあります。
相手を脅したり暴力を振るう行為はもってのほかですが、トラブルのきっかけになるような運転も「自覚のない交通違反」の延長線上にある場合が多いと思います。
「自分は何もしていない」ではなくお互いに「自分はどんな運転をしていたか覚えていない」んだと思います。

・視野が狭くなる

無意識に運転しているとぼんやりと視野が狭く、遠くまで見通せなくなります。おそらく前方20mくらいまでしか認識できていないと思います。
なので「速度による停止距離」を理解していないことに加えて、長い距離を測ることが難しく、20m以下の車間距離しか保てないんだと思います。

視野や見通しが狭いと自分の目の前の車両の動きしか見えないので、その先の状況を予測できません。
また、何も考えず前の車両について行くだけの運転だと前方から視線が動かず、標識、停止線、予告信号、カーブミラー等に視線をとばすことができませ。スピードメーターに視線を落とすこともないので、いま自分が何km/hで走っているかも把握できません。

視野や見通しが狭いと、先の状況から自分の行動を逆算することもできません。停止してはいけない所でも直前まで気付くことができず停止してしまいます。
青信号の交差点でも、その先が渋滞している場合は交差点内で赤信号に変わる事態に備えて交差点手前で停止する必要があります。
でも視野が狭いと交差点の先の渋滞に気づかずにただただ先行車両へ接近し、スペースの残っていない交差点へ進入してしまいます。警察、消防、病院などの出入り口にある緊急車両用の停止禁止区域も同じです。
動けなくなって初めて停止してはいけないことを実感し、とにかく少しでも前に車間距離を詰める事でスペースを稼ぐハメになっている車をよく見ます。

・切り替えの遅れ、決断力の低下

無意識状態では視野が狭いことに加えて「ただただ前の車両についていく」という惰性が残っているので、前の車両の速度が落ちたとか、車間距離が詰まってきた等、状況が変化してもその事実をなかなか受け入れられず気持ちの切り替えや決断ができません。

前にスペースが空いたらすぐ加速するような、「前進する方向」へは惰性で流れるのですが、「減速する方向」へはなかなか切り替えることができません
一般道では速度標識を見落としていることもあって、低い制限速度に切り替わってもまず対応できません。高速道路の出口等では、本線を降りて連絡通路へ入っても、料金所を通過して一般道に入っても、高速道路を走っていた時の体感速度からなかなか切り替えられずスピードを落とすことができません。
渋滞や自分より低速で動く列に追いついても、いつまでも列の動きに合わせられず前の車両ギリギリに張り付いてしまう人もよくいます。
現実を受け入れて減速への切り替えるには平均しても数分はかかるので、数分間そんな運転を続けたながら少しずつ「自分が思うほど速く進めない事実」を受け入れ、運転が落ち着きます。

信号無視も気持ちの切り替えができない事で起こります。
明らかに間に合わない信号でも、「停止する」「待つ」という減速方向に気持ちが切り替えられず、「この信号は間に合う」「間に合わせる」と決め打ちして加速してしまい、全く間に合っていなくても、前の車両へ急接近してでもそのまま進入してしまいます。

これは物理的にも、アクセルペダルからブレーキペダルに足を移すよりアクセルを踏み込んで加速する方が手軽なので、楽な方へ気持ちが流れてしまうんです。

お店や横道からの合流や進路変更するとき「あと1台通過すれば誰もいない」ような状況でも視野が狭くてそれが見えず、待つことも我慢できず、わざわざ危険なスペースへめがけて合流してしまう車やバイクもよく見ますし、緊急走行の救急車がサイレンを鳴らして近づいて来てもなかなか道を譲る動きに入れない車両もよく見ます。
無意識だと極力決断力を使わない方向に流れてしまうのです。

・想像力の低下

道路では思わぬトラブルが起こります。
急な飛び出し、落下物、エンジントラブル、運転手の操作ミス、第三者の事故に巻き込まれるケースなど何が起こるかわかりません。
無意識だともちろん運転中に予想される危険を想像できませんし、自分が想定している以外のことが起きるかもしれないという心構えもできません。
なので結果的に運任せの運転になってしまいます。

安全について考えていなくても何も起こらなかった運転に慣れてしまうと、はやく進みたい気持ちを我慢できないこともあって、カーブや坂道の頂上付近などの見通しの悪いところでも意識的に注意できず、スピードを落とせません。
住宅街や公園のような歩行者、特に子供の飛び出しも予想されるような見通しの悪い交差点でも減速できません。
これは事故の危険性などを考えていないからこそできる芸当であって、少しでも想像力があればこんな運転はできないと思います。

・当事者意識の低下

無意識に運転していると車両を移動手段としか捉えられず、凶器を扱っているという感覚を失ってしまいます。
そうすると自分が交通事故の当事者になるかもしれないという「当事者意識」を持つことができなくなります。

ひき逃げ、当て逃げのニュースもよく目にしますが、事故を起こしておいて現場から逃走するのは、当事者意識や心構えもなく運転しているために、突然事故の当事者、それも自分が加害者になった事実を受け入れられず、パニック状態になって咄嗟に現実逃避して逃走してしまうのだと思います。

また、当事者意識を持っていないと交通事故や交通犯罪のニュースや安全運転の啓発活動を見聞きしても、自分事と捉えられず自分の運転を考え直す機会に活かすことができません。
これだけ毎日のように交通事故、交通犯罪のニュースが流れているのになかなか違反や事故が無くならないのはやっぱり安全無意識運転手の意識にニュースが届いていないからだと思います。

「接近はするのに追い越さない運転」に当てはめてみると

これら無意識運転の特徴を踏まえると、先ほど紹介したよく見る違反「前の車両に追いついた車やバイクが接近はするのに追い越さない」の理由は、

・視野が狭く速度標識を見ていないので制限速度がわからない
・速度メーターも見ていないので自分の速度もわからない
・速度による停止距離を把握していないので危険な車間距離でも気づかない
・事故になるかもしれないと想像できない
・「追いついた」「これ以上速くは進めない」事実を受け入れるのに時間がかかる
・決断力の必要な「追い越す」という選択にはなかなか至らない

このようなことが原因だと考えられます。

横断歩行者妨害で考えると、
・横断歩道手前の「ひし形」のマーク、横断歩道の存在を見ていない
・待っている歩行者や自転車も見ていない、先に停止している対向車両がいても見えていない
・横断者優先というルールを覚えていない
・はやく進みたい気持ちから止まる気持ちに切り替えられない

といった具合です。

○安全無意識運転を育てる社会

僕が見てきた限り、今や大半の運転手は自分が安全について考えらていない自覚が無く、誰かが注意しないと気づくことができないのが実情だと思います。

ですから彼らを放置してきた人達にも問題があると思います。
違反や危険運転を放置することは本人が自分の運転に気づく機会を奪い、更に危険な運転を育てることになります。

警察

警察の方々は何かあったら対応してくれますが、事故ではない、交通違反だけの案件では全てに対応しきれません。

今、無意識の運転手が安全運転を意識できるのは警察官や警察車両が視界に入った時だけです。
それは警察が、罰金や行政処分によって自分を脅かす存在だから当事者意識(被害者意識)を持つのです。
道路上で彼らに運転を意識させられるのは同じ運転手ではなく、警察という組織だけです。
ですので警察の対応が危険な運転の質と量を左右すると考えます。

・取り締まりきれない違反

しかし街を巡回するパトカーは多くありません。
警察官を何日も見ないことだってザラにあります。危険運転の抑止力にはなりきれていません。
しかし、いざパトカーの目の前で道路交通法違反があったとしても取り締まりを受けることはほぼありません。
無意識の運転手は普段から安全運転をする習慣がないので、いざ警察の前でだけ大人しくしようとしても上手くは出来ません。
しかしそこで警察が彼らを取り締まることはなく、注意もしません。
一般道の巡回で取り締まるのは信号無視や駐車違反のような一目でわかるものぐらいで、スピード違反も車間距離保持義務違反も取り締まらず見逃します。パトカー自身が車間距離不保持をされていてもです。

そして運転手たちは警察が視界から消えると「いつも通り」の何も考えない運転に戻ります。この日常が繰り返されています。

巡回ではない取り締まりは、警察署内からのシートベルト着用義務違反の取り締まりや、地元民にはおなじみの場所からのスピード違反の取り締まり(ネズミ捕り)があります。
しかし最高速度違反・スピード違反は「最高速度+10km/h」以上のスピードでないと取り締まりませんし、注意もしません。車間距離保持義務違反の取り締まりに関しては今まで一度も見たことがありません。

警察署へ赴いてドライブレコーダーの映像提供をしても、事故や損害がない限りは対応してもらえません。
僕自身2020年6月の法改正以降、何度かあおり運転の被害に遭い、警察の方に現場に臨場してもらったり、映像を持ち込んだこともありますが、全て「接近はしているが、故意とは認められない。」との事で取り合ってもらえませんでした。
「蛇行運転やパッシング、クラクションなど、目に見える妨害行為がない限りあおり運転とは認められない」とのことです。
ではそこで車間距離保持義務違反扱いに切り替わるかというとそんなこともありません。

命を脅かす運転がお咎めなしになるのは納得いきませんでしたが、違反の数が多すぎて1件1件当たるのは限界があるということも実感し、通報も映像の持ち込みもやめました。

・取り締まり基準が安全無意識運転の基準になる

しかしこの警察の取り締まり基準はそのまま安全無意識運転の運転基準になります。
最初に述べたように、彼らは注意されないかぎり危険運転に気づけないからです。
そのため、取り締まりを受けない「最高速度+10km/h以内」のスピード違反も「目に見える妨害行為がない車間距離保持義務違反」もそのまま彼らの運転に組み込まれ常態化しています。

ドライブレコーダーの映像提供による「被害者意識」も抱いたことがないので、現場に警察官がいない限り自分を脅かす者はいないという潜在意識も広く根付いていると思います。

運転免許の更新

運転免許の更新システムも実情に合っていないと感じます。
違反、事故、交通犯罪がなかなか減らない原因は、純粋な操作ミスよりも、運転手の頭から安全運転に必要なルール、意識が失われたことの方が圧倒的に多いと感じます。
一番大事な「安全第一」という意識や道路交通法はもはや「知らない」レベルの運転手も多いのではないかと思います。

しかし今のシステムでは、どんな運転手でもお金さえ支払って椅子に座っていれば無条件に免許更新手続きが進みます。
これでは免許証の有効期限を更新しているだけで、運転手の頭の中は更新されておらず、安全な運転社会を作る機能を果たしていないと思います。

僕が考える免許更新の問題点を紹介します。

・更新期間が空きすぎている

運転免許の更新にかかる所用時間は、違反の点数や免許証の区分によって異なります。しかしこの違反というのも、警察からの検挙を受けた違反の数です。
講習時間は、
優良運転者→5年に1回、30分間
一般運転者→5年に1回、1時間
初回更新者・違反運転者→3年に1回、2時間
と、その他写真撮影等の手続きがあります。
高齢者の方はそれに加えて高齢者講習があります。

言い方を変えると運転手の意識を更新するための時間は、「3年間で2時間半、5年間で30分〜1時間」しかありません
あとは本人が自発的に学び直すかどうかに委ねられます。
でも現在も講習内容を覚えている人、講習で配られた教本をまだ持っている人、読み返している人が何人いるでしょうか。

交通ルールも安全意識も、それを覚えていないことすらも忘れてしまっている人ばかりではないかと思います。
違反や事故の件数を受け入れて、免許の有効期間を設定し直すべきだと思います。

・学科試験をしない

講習の内容は、ほとんどが「講義」です。

主な講習内容
道路交通法の変更点に関する講義
・ビデオによる最近の交通事情解説及び交通安全の注意喚起
・最近の交通事故傾向についての講義
・交通事故を起こしてしまった時の対処法
・交通事故を未然に防ぐための安全確認、危険箇所の把握に関する講義

この内容では更新者は変更された道路交通法以外は理解している前提で話が進められています。しかし現状を考えると、まず本人が交通ルールを理解しているかどうかから確認する必要があると思いますが、学科試験はありません。

そしてなんと違反をした人にすら理解度を確かめていません。
交通違反の中で点数の低い違反が累積した人が受ける「違反者講習」の内容は、講義とボランティア活動または簡単な実車試験免許を受けて感想文を書くだけで再び運転が許可されます。
更に違反点数が累積した人の「免許停止処分者講習」でも適性検査、講義、運転シミュレーション、実車指導の後に20分間の簡易的な筆記試験があるだけです。

2022年に高齢者向けの実車試験が導入予定ですが、こちらにもやはり学科試験はなく、実技だけです。

安全に運転するためには、「そのための知識」と「思い通りに運転する技術」が必要です。
運転する技術はほとんどの人がクリアできるんです。操作が簡単だから。
重要なのは安全に運転するための知識や意識の方です。
講義も大事ですが、まず道路交通法を理解しているかという所からちゃんと確かめないといけません。悲しいけどそのレベルなんです。
またペーパードライバーも無条件に優良運転手扱いせず、理解度を確認しなければいけないと思います。

学科試験には本試験用の問題を再利用すればいいと思います。
自分がルールを理解していないことに気づかせることで、試験のための勉強も含めて安全運転を意識する機会になると思いますし、試験によって実際の違反の内容も「無意識の違反」から「わざと行った違反」に変わっていくと思います。

せっかくハンドルを握る可能性のある人を集めておきながら、反省や改善の機会を与えないまま再び世に放っていては、彼らの「独自のルール」「自己流の運転」に歯止めが掛からず、危険運転は減りません。
簡単に人を傷つけるから、知らなかったでは済まされないから免許制度があります。

今のシステムでは更新者のほとんどは「過去に運転試験に合格した人」に過ぎません。「思い通りに運転する技術」だけで免許を更新しているからいつまでも違反や事故が減らないのです。原因の大半はそっちじゃないから。
危険な運転手を事前にふるいにかけず、事故が起きてから危険な運転だったと確認しても遅いのです。

安全を甘く見た社会-考える運転から体験する運転へ-

注意されない限り安全について考えられなくなってしまった運転手。
取り締まりきれない違反を事故ではないからと結果オーライで放置してしまう警察と、そのザルを通り抜けた運転手をふるいにかけない免許更新。
こんな姿を見ていると、社会全体に「無事故」と「安全」を混同したような体験型の運転が浸透しているんだなと思います。

「無事故」は結果、「安全」は事故が起きないことです。全く違います。
それを混同してしまうと、たとえ事故を起こしかねない交通違反でも、車両がモノや人に接触さえしなければ、その直前までは問題意識を持つことができません。

視野が狭くスペースを詰めて初めて、これ以上進めないと実感する無意識運転手のように利用者も管理者も含めた「運転社会」全体が、頭で考えることができず場当たり的に一つ一つ体験しないと実感が得られない状態になっているのでは無いでしょうか。

○「安全無意識」から「危険運転依存症」へ

安全無意識運転は安全について注意して考えられなくなるだけでは終わりません。独自の進化を遂げてしまいます。
無事故だからといって社会から放置され続けた安全無意識運転の一部は、運転手の「潜在意識」の受け皿となり、更に横着で乱暴な運転が作られていきます

安全無意識では「早く目的地へ行くこと」が全面に出ていましたが、さらに悪化した「危険運転依存症」ではそれに加えて「運転手のテクニック」や「車両の価値等の商業的な側面」が意識されて全面に出ます。アレンジとでも言いましょうか。

いわゆる「ハンドルを握ると性格が変わる」と呼ばれる人達はここに含まれます。危険な運転に心を奪われている、自分に酔っているような状態です。

危険運転依存の入り口

安全無意識運転がデフォルトになってしまうと、そこに問題意識を抱けないどころか逆に気持ちに余裕が生まれて、運転をナメてしまいます。安全や道路交通法に意識を割かない分、潜在意識やプライドのような感情が運転に現れ、そのまま更に危険な運転にある種意識的に手を出し、エスカレートしていきます。

力関係のピラミッドで言えば、頂点に立っていた行政が甘い取り締まりによって実質空位となった今、暫定王者の一般ドライバーたちは各々の基準で運転手に優劣をつけています。車体の大きさや、車両にかかっている金額、運転操作の腕前、危険運転に臆さない度胸などです。それぞれが自分が一位だと感じる判断基準に他人を巻き込みます。運転とは特定の他者と比べる機会がほとんどありません。毎回知らない人たちの中で運転をします。
現状の行政の活動では運転手が自分を省みる機会はほぼ無く、運転手の考え方はどんどん独りよがりになっていきます。

・運転操作から来る自信

安全無意識運転が取り締まりも受けず運転歴を重ねると、事故にならなかっただけの運転に自信を持ち始め、「自分は運転が上手い」と錯覚し始めます。
自信の根拠は、
・運転操作に慣れた
・バック駐車が一回でできるようになった
・車両感覚が身についた
・通り慣れた道ができた
など、いわゆる運転技術の向上が彼らに自信を持たせます。

しかし何度も言うように、運転技術なんて誰でも上達します。それは車やバイクは企業の商品だからです。幅広く購入してもらうために、老若男女誰でも簡単に操作できるように作られているんです。
それは企業努力の結果であって、運転手の技術でも才能でもありません。レーサーじゃないんだから。

ところがベースは「考えていない」ので、そんな簡単な操作ができるだけで自分のことを「運転上級者」と錯覚し、特別感・優越感となりってしまいます。片手運転なんて典型例なのではないでしょうか。

・車両の価値や思い入れによる優越感

車両の価値や能力も運転手に影響を及ぼします。
車やバイクは単なる移動手段だけではありません。車体の大きさ、デザイン、市場価値など様々な魅力がありますし、運転手のこだわりや思い入れも様々です。
その特別な思い入れも特別感・優越感に変わります。

自分はこんなに「いい車」「いいバイク」に乗っているんだ、という思いからその車両に「ふさわしい運転」を公道で再現することを我慢できません。高級車が暴走しがちなのは、気づいている方も多いのではないでしょうか。

悪い言い方をすると、自分の身の丈に合っていない車両の魅力に浮き足立ち、優越感に溺れて興奮状態に陥るということです。
その興奮を危険運転で表現して自己顕示欲を満たすことを我慢できないのです。

こちらもベースは「考えていない」ために、思い入れの強い車、バイクを運転しているという、たったそれだけの事で人の命を脅かす運転を制御できません。どれだけお金をかけていようが、公道では「車両」に過ぎないということを考えられません。
特に車の価値がステータスだった時代から運転している人や、クルマ好き、バイク好きの運転手は車両へのこだわりが非常に強く、この状態に陥りやすいです。

危険運転依存症の醸成

また、このような運転操作への自信や車両への思い入れから来る優越感が前面に出た感情的な危険運転を、本人たちは「上手い」「格好いい」と感じてしまいます
また、危険運転ができる自分を「運転の才能がある」「度胸がある」「優越している」と自惚れ、プライドを持ち始めます。これが危険運転に依存している「危険運転依存症状態」です。

特に男性がこの状態に陥りやすく、あおり運転の90%以上は男性運転手というデータもあります。このような運転が悪い手本となり、憧れたり感化されてしまう人もいると思います。

危険運転依存症の症状

危険運転依存は、無意識運転より更に強い症状が現れます。
無意識運転をもう1段階危険にするイメージです。

・早く進みたい気持ちがより強化される

とにかくはやく進む方が「得」だと考えてしまい、より短絡的で感情的な運転になります。
1秒でも1センチでもはやく前へ進むために、無意識運転に比べてスピードはより速く(最高速度+10km/h以上)、車間距離はより小さく(〜10m程度)なりますし、複数車線の場合はより速く進める右側の車線を好み、隙間を縫うように割り込みを繰り返します。
前の車両の右折左折や車線変更の途中でも待ちきれずに車体のすぐ真横をなぞるように追い越してしまいます。

そのおかげで普通なら間に合わない信号も間に合うようになります。信号のある交差点では、赤信号でも反対の信号が青になるまでなら進入してしまいますし、右折レーンで信号待ちをしているときは、信号が変わった瞬間に対向車線の直進車を出し抜いて先に右折してしまいます。
依然視野は狭いので右折先の横断者を見ておらず、交差点内で直進車を邪魔するように停止するハメになっていますが、彼らには予測を立てることができません。横断者を待ちきれずに目の前を横切ることもあります。

・迷惑=優越という錯覚

危険運転で他人に迷惑をかけて優越感を得ることが目的化し、制御できない場合もあります。
お店の駐車場などの私有地でも、駐車スペースではない場所に駐車したり、お店から車道への合流待ちや右折待ちの時に待ちきれず車体が道にはみ出るまで前に出てしまいます。右折左折や進路変更の時の指示器の点滅時間は短くなり、点滅すらしない時もあります。
先を急ぐためだけでなく、違反をして他人に迷惑をかける事で他人から優先されている、優越している、と錯覚してしまいます

・被害者意識を持ってしまう

依存症運転は安全無意識運転よりもはやく前へ進もうとするので、安全無意識運転なんてより我慢できません。
ましてや道路交通法を守った運転など更にもう一段階「下手」「遅い」「退屈」なものに感じてしまいます

例えば制限速度を守った運転に遭遇した時、安全無意識運転はそのまま何も考えず接近しますが、危険運転依存の運転手はプライドが高い上に、安全よりも道路が速く流れることを重んじるので、自分は「邪魔をされている」「迷惑をかけられている」「被害者だ」と思い込んでしまいます。
なので初心者でも仮免練習中の教習車でも容赦なく煽ります。
禁断症状のような状態です。

あおり運転に関するネットニュースや動画のコメント欄で、「ダラダラ走っている方も悪い」「流れを乱している方も悪い」という類の、道路交通法や数字に基づかないコメントをよく目にします。
彼らがいかに法律よりも自分の感覚を基準にモノを言っているかがよく分かります。「ダラダラ」や「流れ」が一体何km /hを指すのかは答えられません。

・「懲らしめ」てしまう

ベースは何も考えていない上にプライドは高いので、危険な運転をしておきながら、クラクションを鳴らされると逆上します。
優越しているはずの自分に反抗するという「許されない行為」が「反撃」の引き金になってしまいます。

その後の行動といえば決まってあおり運転、幅寄せ、危険な割り込み、急停止といった妨害運転です。その際に車内で暴言を吐いている人もいます。そして急発進をして走り去ります。
自分の運転がルールであり基準なので、自分の感覚に合わない運転や、反抗する運転手は妨害運転を使って「懲らしめ」ようとします。自分の方が優越しているんだと確認、実感するためです。

彼らにとっては反抗された時点で「勝負」が始まっており、その勝負は自分の攻撃が最後であること(勝ち逃げ)、または自分が相手より前へ進むことが達成されないと気が済みません(レースのような感覚)。
ですので後ろからのあおり運転は長引きやすくなります。
更に依存症の症状が酷いと、物を投げたり、車両から降りて脅したり、暴力を振るいます。

このような、強い意志でわかりやすく車両を凶器や脅しの道具として扱う運転は2020年6月の法改正で厳罰化の対象になりました。
しかし、妨害運転罪が施行されてから1年間の摘発件数はたった100件です。そんなわけがありません。危険運転依存症の運転手はまだまだ減っていません。

○制限することが難しい


あなたは誰もいない制限速度40km/hの直線道路を違反せず走ることができるでしょうか?
方法は簡単です、標識とスピードメーターを見てアクセルの踏み込みを数cm調整するだけです。でもこれができないのです。

各道路の制限速度を設定する時には「実勢速度」というものを参考にします。実勢速度とは、その道路をドライバー本位のスピードで走った時の速度のことです。その実勢速度の累計の85%の速度を基準とし、そのほか周辺の状況などを考慮して「制限速度」が設定されます。
ですので何も考えずドライバー本位の運転速度で走り、それも周囲の状況なんて見えていない運転手では、制限速度を上回るのは当然のことなのです。

「制限速度」と言うように、運転手には「制限」が求められています
道路交通法を逸脱した運転など、何も考えなくても、無免許でも、誰でもできます。
何度も言いますが道路交通法は初心者でも苦手な人でも守れるレベルに設定されているし、スピード違反はアクセルを踏み込む、バイクなら手首をひねるだけ、車間距離保持義務違反は前の車両のブレーキランプを見ておけば普通の減速なら簡単に対応できます。

ですから簡単な操作で簡単なルールを破った運転が出来るからといって上手くもなければ特別でもないんです。依存症運転ですら、やろうと思えば誰でもできます。危険な運転ができたとしても、いちいち披露しなくてよいのです。

免許取得後、運転能力は上達していくと思われがちですが、それは初心者運転期間までの話です。
大半の人は運転経験を重ねて気持ちに余裕が生まれると運転をナメて、安全無意識運転や依存症運転でその余裕を埋めてしまうので、安全に運転する能力はどんどん低下していきます。
運転の苦手な人や初心者の人の運転と、運転をナメた人の運転は全く違います。

「できるけど、やらない。」
操作の手軽さと簡単に破れるルールを前にして自分を制限することこそが最も難しいのです

一度横着な運転を覚えてしまうと、どうしても我慢できません。人の命がかかっていてもです。我慢できなくなる依存症を防ぐために無意識運転を防ぐ、そのために安全運転を心掛ける必要があります。

そして実際には大半の運転手は、別に言うほど運転操作が上手くもありません。
前の車両のギリギリまで接近し、ギリギリまで近づいたらブレーキをかけるという動作を繰り返しているに過ぎないからです。
普段から制限を設けた運転をしていないので勾配やカーブに合わせて一定の速度や車間距離をキープするようなアクセル操作もできず、カーブに入ると離れていきます(ついてこられても困りますが)。
渋滞のような低速で走るときですら、車間距離を保てず極端に近寄っては離れる動きを繰り返します。

もちろん定速運転や制限を設けた運転も意識すれば誰でも簡単にできるものです。でも意識して制限しないと絶対にできません。

誰でもできる飲酒運転

飲酒運転も依存症運転のひとつで、自分への特別感や優越感から「飲酒しても自分なら運転できる」という自信から手を出すのだと思います。
飲酒運転のやり方は、お酒を飲んで運転するたったそれだけなので誰でもできます。
でも飲酒して「安全に」運転することが難しいから、禁じられているんです。

飲酒運転は、飲酒する際に本人、アルコールのを提供者、その他周囲の人間によって未然に止めることができる分、故意であり、より悪質です。
また、普段でも危険な運転しかできない運転能力がアルコールによって更に低下します。
理性や判断能力も失う可能性があるので、厳罰を避けるために警察から逃走して第三者を巻き込む事故が発生する危険性もあります。

それを体内のアルコール量で「酒気帯び運転」か「酒酔い運転」かで減刑されるのは、やはり社会が「操作できるかどうか」に重点を置き、運転をナメているんだなと感じます。

高齢ドライバーの問題の原因

いわゆる「高齢ドライバー」も、彼らが若い頃、それも今より横着が許されていた時代から醸成された運転がほとんどだと思います。
もちろんベースは「何も考えていない安全無意識運転」ですので、残っているセーフティネットは「とっさの運転操作(急ハンドル・急ブレーキ)」しかありません。
若い頃はそれでよかったのかもしれませんが、加齢とともに反応速度がついてこなくなり、そしてついに事故が起きてしまいます。

高齢ドライバーは、交通事故を起こす前に交通違反や物損事故などの予兆がある事も多いと思いますが、その時になって長年続けてきた「反応速度にまかせた運転」を辞められるかといえば、もう手遅れです。
安全無意識のまま放置され続けているので道路交通法という判断基準も失っていますし、家族や周囲からの進言を受けても、根拠のない自信や運転できない生活への不安から、本人の意志で自主返納を決断するのは相当難しいと思います。

危険運転に関わらないためのテクニック

安全無意識運転手、危険運転依存症の運転手のような安全運転ができない人とは関わらないことが一番です。
危険な瞬間にクラクションを鳴らすのは問題ありませんが、それ以上は関わらないで下さい。
免許を取ったばかりの人によくあるのですが、彼らに注意をしたり、懲らしめようとする人がいます。

しかし彼らは道路交通法という基準を失い、違反している自覚も全くないので、「自分は何もしていないのに攻撃を受けた」と受け取ります。
特に依存症運転手は興奮状態に陥っているので、そのような被害者意識が引き金となり、反撃のために簡単に応戦してきます。そのトラブルに第三者が巻き込まれる可能性も十分にあります。
そんなことをしても危険な運転手が1人増えるだけです。危険運転で彼らを裁く権利もありません。暴言を吐いたり、中指を立てるのももってのほかです。

彼らを軽蔑する気持ちはわかりますが、彼らはそもそも一般人の注意で何か立ち止まれる状態ではありませんし、危険の原因が何かわかっていないので改善の余地はありません。運転中のコミュニケーション方法は乏しいのでこちらの真意が伝わることもありません。
相手にせず、目も合わせないでください。

ドライブレコーダーに証拠を残すために、敢えて危険運転から離れないような行為もやめて下さい。また、自分が被害者でなくても、危険運転には近づかないで下さい。事故に巻き込まれる可能性があります。

危険運転の見極め方

彼らと関わりを極力減らすためには安全無意識運転、依存症運転を見極めて、距離を取る必要があります。

安全無意識運転手、依存症運転手の運転には特別なものはなく、完全にパターン化しているので、シチュエーション、車種、運転の特徴を覚えておくと大体予測できます。
また、これらの特徴は掛け合わさる事でより確実に特定できます。

危険運転に陥りやすいシチュエーション

無意識がベースにあると、道路の形やシチュエーションの影響を強く受けます。

・下り坂

無意識だと、当然制限速度についても頭に無いので、坂道の勾配によってアクセルの踏み込み、ひねりが変わることはありません。
そのため下り坂では位置エネルギーが加わって必ず加速していきます。
しかしそれでも無意識なので、加速しても車間距離は変わりません。むしろ無意識なぶん簡単に接近してしまい、平らな道を走るより短い車間距離になります。
減速する気持ちに切り替えることもありませんので、下り坂で速度や間隔を保てる人は99%いません。

・山道

山道は勾配もあり、カーブが多く、木々で見通しが悪いので慎重に運転する必要があります。
でも無意識だとそんなことを注意することができません。
民家やお店も少ないため人通りも少なく、信号もほとんどありません。見通しが悪くてもその先の危険を想像することができないので加速してしまいます。
カーブが続く道路をコースに見立てて、レースの真似事をして大きく傾きながらカーブするバイクもよく見ます。

・長い直線、広い道幅

長い直線が続く道は、見通しも良く、余裕を持って運転できますが、その余裕を埋めるように安全意識は薄くなります。
直線の分ハンドル操作も少なくなるのでのびのびと加速していきます。
また、道幅が広く歩道やガードレールが整備されていると、歩行者や自転車との関わりも少ないので速度超過が起こりやすくなります。

・高速道路とその周辺

一般道から高速道路の入口、料金所に近づくにつれて、スピードを出してはやく進みたい気持ちが抑えられずにスピードが上がり、車間距離も狭まります。
高速道路は一般道より見通しも良く、カーブも緩やかで、歩行者自転車もいません。何よりスピードが高い分、より興奮状態にも陥りやすいです。

高速道路の走行中ももちろん前しか見ていませんので、道路脇の確認地点の標識も見ていませんし、地面の車線境界線の数も数えることができませんので一般道から高速道路の本線に入っても車間距離は近いままです。ここでもまた、接近することはあってもすぐに追い越しません。追い越す決断をするのに時間がかかるからです。
また出口やサービスエリア、連絡通路への分岐点などが近づくと更に車間距離は近くなります。そこに用事がある車両も、「はやく用事のある方へ行きたい」気持ちを抑えられないからです。(詳しくは後ほど解説しています)

高速道路本線から出口や料金所へ向かう際も減速への切り替えができないので、連絡通路に入ってもスピードはなかなか落ちません。

ETC搭載車が90%以上なので、料金所が近づいてもほとんどの車両はそのままの60〜70km/hぐらいの速度で進入します。料金所の表示通りの20km/hに徐行している車両は見たことがありません。

一般道に出てもしばらく体感速度の惰性が残るので、気持ちを切り替えられません。高速道路の出口は高架からの下り坂が多いので位置エネルギーもそのままに60〜70km/hぐらいの速度で一般道を走行します。
したがって高速道路出口付近の一般道はスピード違反ばかりです。

高速道路は歩行者や自転車、原付自転車はいませんが、一般道より程度のキツイ危険運転に巻き込まれます。

・信号のある交差点

無意識で運転していると信号のある交差点にさしかかった時、既に青信号だったり歩行者信号が点滅中だと、信号を通過したい、止まりたくない、という気持ちを抑えられなくなります。
信号が変わる前に交差点を通過することを最優先してしまうので、無意識に加速し、車間距離も狭まります。
青信号に変わって動き始めた列に追いついた時のような、余裕で通過できる場合でも、視野が狭いためにその光景を見落としているのか、関係なく急いでしまいます。

また、一度加速するとすぐに減速へ切り替えることができないので、急いで信号を通過した後は、その惰性でしばらく高いスピードのまま走ります。
そして勢いのままに車間距離を詰めてしまいます。

・出勤時間、帰宅時間

安全運転ができない人は「余裕のある運転計画」を立てられないので、基本的にスピード違反をした上での所要時間を元にした運転計画を立てます。
特に平日の朝、通勤時間は急いで運転している人ばかりです。
通学時間でもあり、歩行者も多いですがそんなことは考えられません。
こんなにも速く動く乗り物を急いで運転するなんて、時間の余裕が無さすぎます。

夕方の帰宅時間は、仕事での疲れやストレス、はやく家に帰りたい気持ちがそのまま危険な運転に現れます
どちらの時間帯も交通量が多いのでより危険です。
バイクの数も増えるので、すり抜けや急な割り込み、車の死角で行う車間距離保持義務違反が多くなります。

週末や連休はバイクの数は減りますが、車の交通量は増えます。

危険運転に陥りやすい車種

車両の見た目からも危険運転を予測することができます。
無意識だと車両の特徴からも影響を受けますし、車両への思い入れから危険運転依存症に陥る人も多く見られるからです。車体の大きさ、市場価値、車両感覚の掴みやすさ、社用車などから判断します。

・トラック

攻撃力の高い大きな車体で強くなったと錯覚するのか、運転手の気持ちも大きくなりやすく乱暴な運転になります。
ミッション操作や大きな車体の車両感覚も一般的な車より難易度が高いので、運転手の自信に繋がりやすいです。

商用車ですので仕事のスケジュールに追われて急いでいる場合も多いと思います。貨物用トラックは長距離移動の疲れが運転に現れることもあると思います。
土砂などを運ぶ工事用トラックは中・近距離で同じ道の往復が多く、土地勘が危険運転を助長します。運転席が車体の前方に位置している分、前方への見通しが良い事も接近する理由の一つだと思います。

また、ミッション操作の都合で一度停止すると発進に手間がかかるので、その煩わしさから停止を嫌って渋滞や信号待ちではギリギリまで接近して停止せずに青信号を待とうと粘ります。

車体が大きい分、事故の際は衝撃が大きいので要注意です。

・バス、ゴミ収集車

バスやゴミ収集車も車体の構造はトラックと同じですが、移動範囲が更に狭くなります。
通り慣れた道、コースを何度も走りますので土地勘があり、危険運転や横着を助長します。
バスは道路交通法よりダイヤを優先しますが、回送の時でも酷いです。トラックと同じようにギリギリまで接近して停止します。

・ワンボックスカー、ワゴン車

病院、デイサービス、工務店などで社用車として使われているワンボックスカーやワゴン車も、運転手を依存させるには十分な車体の大きさを持っています。
トラックなどと同じく運転席が車体の前方に位置しているので車両感覚が掴みやすく、走行中も停止時も前の車両ギリギリまで接近します。
病院やデイサービスの場合は同じ人が同じ車両を運転することが多いでしょうし、工務店などの場合は車体の傷も多く、傷つくことへの抵抗が少ないのかより大胆な運転になりがちです。もちろん事故の際は衝撃が大きいです。
ワンボックスカー、ワゴン車はほぼ例外なく危険です。

トヨタハイエース、タウンエース、日産キャラバンなど

・商用バン、軽ワゴン、軽トラック

こちらも運転席が車体の前方に位置しており、車両感覚を得なくとも目視で車体の輪郭を確認できるので、ギリギリまで接近します。
ワンボックスカー、ワゴン車より小回りも効いて扱いやすいぶん横着な運転にも手を出しやすく、危険な運転が本当に多いです。
社用車として使われることも多く、仕事の都合で急いでいるのか、暴走する姿をよく見かけます。

軽バン:スズキエブリイ、ダイハツハイゼットカーゴ、アトレーなど
軽トラ:スズキキャリイ、ダイハツハイゼットトラックなど
黒ナンバーの個人事業主は急いでいることが多い

・タクシー

商用車全般に言えることですが、特にタクシーの運転手は仕事として長年同じ形の車に乗り続けているので運転歴は圧倒的に長く、運転操作は上達し、車両感覚も掴んでいます。移動範囲も限られますので土地勘もあります。
言ってしまえば危険運転に陥る条件が揃っています。

特に空車や回送の時は乱暴な運転が目立ちますし、乗客の乗り降りのためなら交差点5m以内のような駐停車禁止場所でも停車しますので非常に危険です。
道路上で仕事をしていながら仕事の方を優先する人が多い印象です。

・その他の社用車

プロボックス、サクシード、AD、ミライースアルトワークスといった車は社用車に採用されることも多いです。
他の社用車と同じく、同じ車両を何度も運転するので車両感覚を得やすいですし、仕事の都合で急ぐことを我慢できず危険な運転へ発展しやすいです。

トヨタプロボックス、サクシード、日産AD、ダイハツミライース、スズキアルトワークスなど

・ミニバン・SUV

ミニバンやSUVはファミリーカーの中では車体も大きく、市場価格も高くて外装も内装も高級感のあるデザインが多いです。依存するには十分な魅力が詰まっています。
大きな車体を扱っているという操作感への自信にも繋がります。
いわゆる「オラオラ顔」のデザインも危険運転を助長していると思います。
こちらもファミリーカーで言えばダントツで危険な運転をします。もちろん車体が大きい分事故の衝撃も大きいです。

ミニバン:トヨタアルファードヴェルファイアエスクワイア、ヴォクシー、ノア、日産セレナ、エルグランド、ホンダステップワゴン、三菱デリカ
SUV:CH-R、トヨタハリアー、ライズ、RAV4ランドクルーザーマツダCX-5、ホンダヴェゼル、スバルフォレスターなど

・高級車

こちらはみなさんおなじみだと思います。
市場価格の高さ、高級感のあるデザインから特別感から興奮状態に陥り、興奮がそのまま運転に現れて暴走します。
比較的運転歴の長い中年〜高齢の男性運転手が多いのでより危険です。

ベンツ、BMW、レクサス、フォルクスワーゲンアウディボルボ、MINI、FIAT、プジョーシトロエンフェラーリなど

・人気の国産車

国産車でも男性人気の高い車種は危険運転が目立ちます。
特にプリウスは「プリウスミサイル」と有名な通り、型式を問わず危険な運転されているのが目立ちます。価格も依存するには十分です。
あおり運転を行うのは90%以上が男性の運転手ですので外車も含めて男性人気の高い車種は危険運転をする可能性が高いです。

トヨタプリウスプリウスα、クラウン、マークX、ウィッシュ、ホンダシャトル、オデッセイ、ストリーム、スバルレガシィレヴォーグなど、
セダンやステーションワゴンなど、車体は運転席より前方に長い形で、やや車高が低くヘッドライトが上下2つずつ点灯するタイプが好まれている印象です。

・旧車、スポーツカー、珍しい車

現行車ではあまり見かけないような珍しい車も、その特別感から興奮状態に陥ります。
排気音の大きさを見せつけるように加速する姿もよく目にします。相当こだわりや思い入れの強いクルマ好きが選ぶのだと思います。

また、カスタム仕様車や、改造車、ステッカーがたくさん貼ってある車両などもこだわりが強い証拠なので警戒が必要です。

・新しい車

発売されたばかりの車や、現行車の新型、CM放送中の車、などもその新しさや特別感から興奮状態に陥りやすいです。ピカピカな車体も特徴です。
電気自動車も電気で走ることに優越感を覚えるのか、危険運転が目立ちます。
最新である限り興奮状態に陥り続ける運転手もいますので、発売から数年は注意が必要だったりします。

・年季の入った車体

傷や凹みのある車、ヘッドライトが曇ったり黄ばんでいる車体は長年運転され続けている可能性が高く、運転手は運転操作、車両感覚に長けていることが多いです。
車体の傷や凹みを放置している場合、傷つくことへの抵抗が少なく、大胆な運転をする可能性もあります。

希望ナンバー

希望ナンバーとはナンバープレートを有料で好みの数字へ変更したものです。
三桁以下の数字、ゾロ目、連続番号、左右対称、足したら100になる組み合わせ
などがあります。皆さんもご存知だと思います。
数字のためだけにわざわざお金をかけてカスタムしているのがこだわりのある証拠です。「車両にお金をかける」という意味では優越の一つです。ナンバープレートの地域からもある程度危険運転を予測できる場合もあります。

・男性が運転する軽自動車

軽自動車は維持費も比較的安いため運転歴が長くなりやすいですし、車体も小さく車両感覚を得やすいので、車の中でも特に簡単に運転ができます。
やはり男性が運転する方が更に運転が横着で危険な運転になります。普段は普通乗用車を運転しているが、セカンドカーの軽自動車を運転している場合など、明らかにナメて危険な運転になっています。

・高齢者マーク

高齢ドライバーは長年の運転で危険な運転が確立されています。安全に運転する能力が不十分な動きが多く見られます。
こちらもやはり男性運転手の方が依存が強いのか、危険です。

・バイク、原付

バイク、原付自転車は車よりも小回りが効き、運転席からの見通しも抜群なので車両感覚は目視で確認出来ます。
車体が小さい分、すり抜け等の横着の可能性は広がり、より小さな隙間も狙うことが可能です。
道路の右でも左でも、通れるスペースがあれば好きなように走りますし、平気でセンターラインや車線境界線からはみ出して、隙間を縫うように走ります。その際に方向指示器も出しませんので車の運転手からすると、急に視界に現れます。
原付でも中型・大型バイクでも同じ動きをします。
すり抜けはもちろん、車の死角でも真後ろでも関係なく接近します。
体感速度の速さも興奮材料になるのかもしれません。

信号待ちなどで停止中の車の横をバイクが通り抜ける分には構わないのですが、車の列が動き始めるタイミングでも追い抜きや通り抜けをしてきますので、発進時は左右確認をした方が安全です。

また、バイクが車を煽るという構図は想定されていないのだろうなと思います。事故が起きれば即死する可能性もある車間距離に自らを人質として危険な運転をしているようにも見えますが、バイクの運転手で速度と車間距離を理解し実践できる人なんて10年間で2、3人しか見たことがありません。ほぼ全員後方5m以内まで接近します。
バイクの前方にもナンバープレートをつけてほしいです。

危険運転の前兆

運転の内容や特定の条件下での動きからも、危険運転を予測することができます。

・より簡単なルールを守れない

道路交通法を守るために、信号、停止線、標識など一目瞭然の分かりやすい「指標」がありますが、車間距離だけは「空間」なので、分かりやすい指標がありません
高速道路の数少ない確認地点か、流れていく車線境界線やセンターラインが点線の時しか基準として使えないので、よく見る違反例の項目で紹介した通り、目測で測ったり、目標物を決めて秒数を数えるなど、運転手が能動的に考えながら指標を設定し安全を確保する必要があります。

これらも意識し練習すれば誰でもできますが、「速度によって変わる停止距離を空間で測りながら運転すること」は他のルールを守るよりも難易度が高いので、車間距離を守るよりも簡単なルールすら守れない人は車間距離保持義務違反をする可能性が高いです。

ですから、信号を守れず通過する、一時停止線で停止せずに合流する、横断歩道の歩行者に気づかない、最高速度以上のスピードを出すなど、こういった初歩的な違反をする車両は基本的には車間距離も守れず接近します。
最高速度違反は見分けにくいかもしれませんが、自分が最高速度で走っていれば、後ろから近づいて来る車両は全員違反です。

・信号待ちの動き

赤信号へ向かって減速中の車両へ接近する、停止時に1m以下まで接近する、青信号に変わった時に前の車両より先に動き始めるなど、列自体が動きようのない時でも前進することを諦められない運転手がいます。
ポンピングブレーキや坂道発進などで、ブレーキランプが消える度にいちいち反応して接近してくる人もいます。

彼らは「自分が踏み間違えを起こすかもしれない」など夢にも思っていないのか、ただただ進んでいる実感を求めて車間距離を詰めます。
探し物やカーナビ、スマホの操作、化粧、伝票整理などの「社内の用事」を済ませる時間を稼ぐためにできるだけ前で停止する場合もあります。

停止直前までスピードが落ちず、ブレーキの反動で車体が大きく揺れていたり、信号待ちの間に周りの車両の少しの動きにも釣られていちいち反応するようなら、相当依存症の可能性が高いです。

・渋滞を抜けた後の動き

安全運転ができない人は余裕を持った運転計画を立てていませんし、普段好き勝手に運転している分、渋滞につかまると、スピードはより遅く、時間はより長く感じ、大きくストレスが溜まります
その分、渋滞が解消されたり、渋滞の列を抜け出した後は解放された気持ちを抑えられず、一気に加速してしまいます。そして追いついた車両には接近します。

個人的には渋滞の方が物理的にスピードも抑えられるし、気持ちの切り替えに時間がかかる人もいますが車間距離を詰めても仕方がないと受け入れるしかない状況なので、強制的に交通ルールが守られて比較的安全になるので気が楽で好きです。

・彼らにとって「邪魔な」車両がいなくなった後の動き

バスのような大型車は一般的な車より加速するまでに時間がかかりますし、右折専用レーンの無い交差点などの狭いスペースを通り抜けられなかったり、停留所の形によっては後続車が追い越すスペースが無かったりと、道路の流れを滞らせがちです。

安全運転ができない人、特に依存症運転手は安全よりも道路の流れを重んじるので彼らが後続車の運転手の場合は当然被害者意識を持って大きくストレスが溜まります。
そういった「邪魔」な車両がその車線からいなくなったり、邪魔な車両の追い越しに成功したとき、渋滞を抜けた時と同じく気持ちが解放されて急加速します。

車両の動きとしては、車体が車線中央から左右どちらか(左が多い)に寄っている、先行車両の右折左折が完了するのを待ちきれずに先行車両の車体をなぞるように膨らみながら追い越す、そういった動きには一瞬でも早く追い越して前へ進みたい気持ちが現れていますので、その後は大きく加速し車間距離保持義務違反をする傾向が強いです。

・追い越しをした後

ごく稀にですが片道一車線の一般道でも車が車を追い越すことがあります。バイクならともかく車に追いついてすぐ追い越しの準備に入る人はいないのですんなりと行われるようなものではなく、接近を続けた挙句フラストレーションを募らせしびれを切らした追い越しです。

追い越しを終えた後は急加速します。
前の車が遅いと実感するまでの時間、追い越すという決断に時間がかかった分のストレスからの解放と、追い越した車両にスピードを見せつけたい、追い越した結果早く前に進めたんだと自分の行動を正当化するためにとにかく加速します。
結局追い越した車両に先の赤信号で追いつかれた、なんてことになったら格好がつかないので、できるだけ信号を通過するためにも速度超過しますし、興奮状態に陥っているので多少の信号無視ならしてしまいます。

・横断歩道で止まった時

車両が歩行者が近くにいる横断歩道の手前で安全に停止できる速度までスピードを落としたり、歩行者が待っている場合は停止した時、安全運転ができない運転手(特に依存症運転手)はその行動が義務だということを覚えていないので、「停止した車両のせいで流れが滞った」「待たされた」と被害者意識を持ちます。
そして再発進の後は前の車両に接近します。「懲らしめ」「被害者アピール」です。でも追い越はしません。

・分岐点が近づいた時

高速道路の話で少し紹介しましたが、無意識や依存症の運転手が右折、左折をする予定の交差点や、用事のあるお店の入口、高速道路の入口が近づくと、はやる気持ちを抑えられず自然とスピードが上がり、車間距離も狭くなります。
この行動は運転手によって目的地が違うので予測が難しいのですが、大きな道路への合流地点や大型の店舗の入り口、高速道路の入り口など、人が集まりそうな所に近づくとよく見られます。

・不必要にスペースを詰める動き

頭で考えて予測やシミュレーションをすることができない運転手は、スペースを詰めて動けなくなる体験をして初めて「これ以上進めない」と実感するので、我慢できず不必要に車間距離を詰めたり、スペースに飛びつきます。

車列は低速でしか動いていないのに進みたい気持ちを切り替えられず接近を繰り返したり、
信号待ちで直進レーンも右折専用レーンも動いていない時に、はやく右折レーンに並びたい、右折レーンに空いているスペースに詰めたい衝動が抑えられずに直進レーンと右折レーンの分岐点より後ろからわざわざ対向車線へはみ出してまで進路変更してしまいます。
右折レーンに並んだところで対向の直進車が通り終えるまで交差点を通過できないのですが、対向車を出し抜くチャンスがあると思っているのか、気持ちを制御できず危険を冒してレーンに並びます。

「この道から出ればもっとはやく進める」という希望的観測も含めた衝動的な運転です。

・ハンドルの持ち方

片手をまっすぐに伸ばしてハンドルのてっぺんを持ったり、ハンドルに手首をひっかけながらの運転は、明確に安全運転義務違反であり、運転を甘く見ている証拠です。
トラックやバスなどのミッション車はミッション操作のために片手でハンドルを持ちますが、今や乗用車の99%はAT車ですので片手で運転する必要のある車は少ないはずです。
かといってエンジンブレーキでなだらかに減速するわけでもありませんので、空いている手は膝の上に置ているのではないでしょうか。
右ハンドルの車の右手片手運転はまだもう片方の手も運転に参加している可能性がありますが、左手でハンドルを片手運転している人は、もう片方の右手は窓際に乗せたり、窓を開けて外に投げ出したり、タバコやスマホを持っていることが多いです。片手運転で安全運転ができる人はほぼ見た事がないので危険なだけです。

ハンドルのてっぺんを両手で持って、ハンドルに寄りかかりながら運転する運転手も横着な運転が多いです。

④複数車線でのよく見る行動パターン

高速道路を含む複数車線の危険な割り込みにも予兆があります。この行動は特に依存症の運転手によく見られます。

・依存症運転は「キープライト」

通行の基本として、一番右側の車線を空けて左側の車線を走行する「キープレフト」という原則があります。
しかし依存症の運転手は基本的に早く進める右側の車線を好みます。右側の方がスピードも速く車間距離も近いので、列が速く流れるからです。3車線以上の場合でも右側の車線になるほど依存症運転手の割合が増えます。

しかし例外として、交差点やお店に入るために左折の予定がある場合と、左側の車線の方が流れている印象を受けた場合は左側の車線へ進路変更してきます。
もちろん右側車線を走る感覚のまま狭いスペースにでも危険な割り込みをしますし、目的ははやく進むことなので割り込んだ後も症状を抑えられず危険な車間距離まで接近してしまいます。
左折の用事がある場合でも、ギリギリまで右側車線を走った方がより早く進めるので、用事がある交差点やお店の直前で左に進路変更します。

自分が右折の用事があって右側の車線を走らなければならない時は彼らと関わらなければならないので気が重いです。

・右側の車線から割り込む前の動き

お店への用事は大型店や人気店等でない限りなかなか予測できませんが、早く進むための進路変更なら予測ができます。
一瞬でも左側車線の方が速く流れ始めた時や、速く流れ始めた左側車線の列の中に5m以上のスペースができた時、短絡的な依存症運転手は飛びついてきます。

右側車線から左側車線へ割り込む前の車両の動きは、
1、加速または接近
2、車体が車線境界線に寄る
3、遅れて指示器が出る
です。

 

詳しく説明します。

まず右側車線で先行車両の5m以下(普通乗用車1台分ぐらい)まで接近します。
依存症運転手はそこまで接近してこれ以上早く進めなくなって初めて、流れが悪いことを受け入れ始めるからです。そして「これ以上前に進めない」とを実感すると車線変更という選択肢が生まれ、割り込みの準備に入ります。

そして割り込みの決断をすると、自分が5m以下まで詰めていた車間距離の中で加速し、車体が車線の中心から車線境界線側に寄り始めます。割り込みを狙っているスペースがある場合はそのスペースの真横のポジションを位置取るようにスピードを調整し、割り込みの機会を伺います。
その後車体が白線を跨る頃に遅れて1〜2回の方向指示器、または無点灯で車線変更します。

しかし左側の車線の方が速く流れていることなんて一時的なので、また右側へ戻るハメになります。その時の戻り方も同じです。早く進めるわけでもなく周りを危険に巻き込むだけで終わります。頭で考える事ができないので体験しないとわからないのです。呆れたものです。

・右側車線で煽られている車両にも注意

基本的に右側の車線は依存症運転手で溢れているので、常にスピード違反状態です。最高速度を違反しているのでそれ以上の上限がありません。

上限がないということはスピードは人それぞれということになります。
最高速度以上のスピードの中で、それぞれの運転手の依存具合、車両の性能によって個人差、速度差が生まれるので必ずあおり運転が発生します。
依存症運転手は自分が煽ることには抵抗がない割に煽られることは嫌がる(被害者意識による行動促進)ので、進路変更して左側の車線へ逃げ込んできます。
その際もはやく前に進みたい気持ちは残っているので、できるだけ左側車線の列の先頭に割り込もうとします
割り込む前の動きは先程紹介したのと同じ、車線境界線に寄って、狙ったスペースがあればその真横に位置どりをして危険な割り込みをします。
早く進みたい気持ちは持ち続けているので、これまた右側の車線にスペースができるとまた戻って行きます。

危険な運転手に道を譲る方法

無意識運転、依存症運転は、何も考えずに交通違反をしているので自発的にスピードを抑えたり、追い越したりできません。
どれだけ危険な運転に巻き込まれても、接触するまでは誰も助けてくれませんので、道路交通法の範囲内でできる対策は「我慢して走行」か「道を譲ってやり過ごす」しかありません

明らかに車間距離不保持運転をされている運転手が、煽られていることに気づいていないのか、道を譲るという気持ちの切り替えや決断ができないのか、キリがないので受け入れているのか、そのまま走り続ける姿をよく見ます。


僕の場合、危険な運転に付き合ってしまうとどうしても自分のスピードも速くなり、危険な車両に注意を割く分、自分の運転への注意力は散漫になりがちです。何より凶器と不必要に関わりを持たされることに大きなストレスを感じるので僕は「道を譲る」一択です。

後ろからの車間距離不保持は自分ではコントロールできませんが、前へ譲ってしまえば自分が減速すれば距離を取って関わりを減らせるからです。

事故の被害者にならないように気をつけながら自身も加害者にならない運転をするのは、板挟み状態となりストレスがかかります。
さらに雨天時や夜間は視界も悪く、より危険です。
それで周囲の危険を見落として事故を起こしても誰も助けてくれないし、被害者にとっては関係ありません。

譲ったところで到着時刻に大差はありませんが、危険度はまるで違います。
そのためにも「余裕を持った運転計画」が必要です。道を譲った結果、通過できたはずの信号が通過できなかったなんてことは本当によくあります。
まずは気持ちや時間に余裕を持って出発し、いつでも道を譲れるようにしましょう。

あまり推奨できるようなものでもないかもしれませんが、僕が行っている危険運転にできるだけ関わらずに道を譲る方法をお伝えします。

・停車準備

まず、先ほど紹介した「危険運転に陥りやすいシチュエーション」「車種」「前兆」に当てはまるものを見つけたらいつでも道を譲れるように心の準備をします。

後ろから接近してくる車両に対しては、その車両の速度に必要な停止距離があるうちに道を譲れるのが理想です。
お店やバス停などの「凹んだスペース」(警察に確認済み)へ避難できればそれ以上関わらなくて済みますが、それが難しい場合は路肩に停車して道を譲ります。

その時、車に乗っていても命の危険を感じるような緊急時でない限りはできるだけ自分が危険の原因にならないように、交差点付近、横断歩道付近、カーブ、トンネル、坂道の頂上付近、駐停車者禁止区域などの停車禁止場所を避けて停車します。
可能であれば信号を通過した後に道を譲った方が、赤信号に変わったら列が途切れて楽に車線復帰できます。

対向車線の交通量が多かったりすると「迷惑がかかるかも」と、路肩に停車するのも気がひけるかもしれませんが、あおり運転は故意でなくても非常に危険な行為ですので安全を確保するためには仕方ないと割り切って停車しています。「迷惑」と「危険」は全然違います。
危険な運転手に気を遣った結果、自分が加害者になってしまっても誰も助けてくれないし、何より被害者には一切関係ありませんので、課題を分離して躊躇せず停車の決断をしています。

僕は車の運転しかしませんが、危険運転に巻き込まれた時の心構えとして「自分より交通弱者を巻き込まない」ことが最優先事項だと考えます。運転免許は自分自身に公布されているからです。
最悪、車同士で接触しても車が傷つくだけで済むだろうと考えて、車体が傷つくことは後回しにして自分が加害者にならないようにだけ注意しながら道を譲ります。
路肩に寄って道を譲った結果、落ちていた釘を踏んでパンクしたこともありますが、安全のためには仕方ないです。

ハザードランプを使った停車

接近してくる車両の車間距離が十分なら左方向指示器を出して道を譲ればいいですが、すでに危険な距離まで接近されている場合はハザードランプを点灯して道を譲っています。
その方が接近してきた車両にとって、こちらの次の行動が予測し辛いからです。

左方向指示器を出すと、こちらの次の動きは「左折」または「路肩へ停車」だと予測できますので、追い越しを待ちきれない依存症運転手は「かもしれない運転」ではなく「だろう運転」をして、こちらが減速している最中にすぐ横を車体をなぞるように通り抜けようとします。

ハザードランプだと、「危険を知らせる」「追突予防のための注意喚起」など緊急性を孕んでいるので、安全無意識運転手も依存症運転手もその瞬間だけは我に帰ります。
不確定要素が多く、こちらの次の動きを予測しづらいので大半の後続車両は減速して車間距離を取り、こちらの様子を見ます。そこでやっと車間距離が開くので安全に道を譲る事ができます。
複数車線の場合は進路変更して追い越して行くこともあります。

何も考えていない運転手に考えさせることが重要なのです。考えながら運転すれば安全運転はできますから。

・あくまでも一時的な効果

ハザードランプの点灯によって接近していた後ろの車両が距離を取り、一時的に危険運転から解放されたからといって、味をしめてそのまま走行してはいけません

その後ランプを消すと大概の後続車両は「通常通り」の運転に戻り、また接近してきますし、複数車線で進路変更した車両も戻って来てまた接近する場合があります。
そこで再びハザードランプを点灯してももう相手にされず、後続車両は離れないことが多いです。再び離れたとしても普段車間距離を保つ運転をしていないので上手くできず、近づいたり離れたりを繰り返します。危険な運転をしてしまう人など信用せず、期待せず、そのまま道を譲りましょう。

中には1回目のハザードランプから全く動じずあおり運転を続ける運転手もいます。これはかなりの依存症ですので、直ちに道を譲ることをお勧めします。

高速道路などの路肩に停車できない場合でも追突防止のハザードランプは有効です。高速道路では大概の後続車両はハザードランプを確認すると進路変更します。

しかし、そもそも正しい車間距離を理解していないから接近する訳なので、進路変更してこちらを追い越した後は、すぐに危険な車間距離で前に割り込んでくるので注意が必要です。
また、出口、サービスエリア、分岐点が近づいた時、そこに用事のある車両はハザードランプを点灯しても、多少減速はしますが進路変更はしません。はやる気持ちの方が勝っているので車間距離を守れる人はまずいません。
その時も車同士の事故なら仕方ないと覚悟して、加害者にならないように気をつけています。

・譲った後も、関わらないこと

何も考えず危険をふっかけてきた運転手に腹が立つ気持ちを抑えて、道を譲ったらその人には関わらないことも重要です。
相手もどうせ何も考えず被害者意識を持って睨んでくるだけなので、目を合わせず、自分が加害者にならず安全に車線復帰できるように周囲の確認をしています。
何一つ改善が期待できないので関われば関わるだけ損です。

以上が道を譲る方法です。ご参考までに。

○まとめ

車やバイクは社会に必要なものです。
でもそれを理由に社会全体が運転というものを甘く見て危険運転を放置してしまった結果、車やバイクが「凶器」だという認識が薄れ「便利な道具」という側面だけが先行してしまったと思います。まさにアクセルとブレーキで言う、ブレーキが壊れた状態です。
その状態が長年に渡り危険な運転を育て、道路は危険で溢れてしまいました。常にいつ事故が起きてもおかしくない状態なので、ちょっとしたはずみですぐ交通事故に発展します。

そして事故を起こして人を傷つけたり命を奪っても、とても軽い刑罰で済ませているとも感じます。
もちろん安全に気をつけていても交通事故の当事者になってしまうことはあります。でも人間に運転させるなら、セーフティネットを機能させる努力をしないと道路はいつまでも危険な状態のままです。その一瞬で死傷される方、家族、友人、知人にも一生続く悲しみ、苦しみ、虚しさがあります。そういった想像力が無さ過ぎると感じます。

社会が安全を甘く見てしまったことでルールを守っている人を尊重できなくなってしまったとも感じます。悪気はなくとも危険運転に変わりはありません。無意識に凶器を扱うことはとても危険な行為です。

一度運転をナメて一線を越えてしまうと、もう自分の力だけでは安全運転へは戻れません。もちろん無意識ですから無知の知もなく、無自覚無意識に道路交通法も、道路交通法をを守っている人も尊重する事ができず、それどころか我慢できずに攻撃をしてしまいます。
運転が誰でもできるということは、誰でもこういった状態になります。僕自身もそうなる事を分かっているので、横着な運転になっていないか、日々気をつけています。少しの修正で済むうちに。

交通ルールは守っていても事故に巻き込まれます。
歩行者として交通社会を生きる方には、道路は全く安全じゃないということをわかっていただきたいと思います。
一見普通に運転しているように見える運転手も、実は何も考えずぼんやりと前を見ているだけで歩行者なんて見えていません。その時犠牲になるのは交通弱者の方です。決して安心してはいけません。運転手とは危険な生き物なんだとしかあり意識していただきたいと思います。

また、歩行者や自転車の中にも信号無視をしたりする人がいます。
これは何も考えなくなる運転手と同じく、「通り慣れた道」「我慢できない」「違反をした方が得」という考え方からくるものです。
違反と違反が噛み合えば事故の確率は飛躍的に上がると思いますので歩行者、自転車にも安全の重要性を自覚してほしいと思います。

10年間の運転経験の結論としては、運転は簡単すぎてもう人間には扱いきれないのだと感じます。危険運転も安全運転も簡単ですが、「はやく進めて得」をするのは危険運転。その誘惑に勝てる人はあまりいません。安全が担保されていない自覚がないからです。早く人間が操作しない時代がくる事を願っています。

それまでは免許更新時の試験の実施、具体的な車間距離を法律で定める、スピードメーターのように車間距離が表示できるようにする、ドライブレコーダーの活用、ミッション車の導入、二輪車の前方ナンバープレートの表示、免許返納後の移動手段の整備などが進めばいいなと思っています。何も進まないでしょうけど。
自動車、バイクメーカーも、クルマ好きバイク好きばかりターゲットにせず、凶器を作っている自覚を持って運転が苦手な人、高齢者用の車両の開発なども視野に入れて欲しいと思います。期待していませんが。

おわりに

約4万字もの長い文章を読んでいただきありがとうございました。
この記事を書くに当たり、更に運転や実際の道路の危険性を強く感じ、最近はできるだけハンドルを握らない生活を意識するようになりました。
買い物は徒歩やネットショッピングで済ませ、運転が必要な場合は用事をまとめて、できるだけ運転によるストレスを減らす努力をしています。

僕自身もちょっと気を抜くと「何も考えない運転」になることを分かっていますのでセーフティネットの「①余裕のある運転計画」から意識して運転に気をつけています。この記事を読んで自分の運転を考え直せる方は「まだ間に合う人」なので、ぜひ安全運転をしていただきたいと思います。

終わり